外見上、溝は、表紙を開きやすくするためでしょう、と極自然に納得できる形をしている。だけどよく考えると溝がなくたって開かせることなんてできる。そもそも革の工芸製本には溝がないです。これ、人に説明するときにまず言うところです。伝統工法で作った本はこれこれこのように溝が無くてもよく開きます、そしてこの微妙な凸部が本がとじ付けられている麻紐で、もとはこれが背に露出していて、バンドやネールと呼ばれてました・・・・などなど。
話は脇にそれました。溝なくたって、本は開くじゃん、じゃあ作ってみよう!と試したのが写真左。頼まれた仕事が角背のハードカバーで、ということだったので「おっ!ちょうどいいから日頃の疑問を試そう!」と思いやってみました。(下の2冊が溝なしです。溝ありのもいろいろバリエーションでやってます。)
で、結論。試作するたびに思うんですが、普通の作りって本当によく出来てるんですよ〜。効率的で作りやすいんです。(手が慣れている人にとってはってことですが。本って、機械化以前にも基本的に量産品で、職人が作っていたわけで、そういう人達が作りやすい作りになってたってことです。)
溝があることで中身と表紙の合体(「くるみ」って言います)がものすごく楽だし、そもそも表紙を作る事自体が楽。(しかし、この部分が慣れてない初心者にはとても難しくて・・・・作ってもらう時にものすごくジレンマなところです。なんとか楽な方法はないものかと模索中。その1つがこの間のNUNO WORKSでの文庫本の改装。)
写真はばりばり伝統工法の革の本の開きのようす。
まだまだ続く溝。
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