2009年4月18日|読んだ本|個別ページ| コメント(2)
きのう、美篶堂さんから『はじめての手製本』(美術出版社)が送られてきました。美篶堂さん、ありがとうございます。手製本のやり方が載っている技法書なのですが、美篶堂というお店、製本所、の雰囲気をそのまま伝える読み物でもあります。本全体があのギャラリーと人々の気配そのもの。
私は自分の出版記念展をやらせてもらったり、何かとお世話になっている場所です。
本の中では上島松男さんの
「10年、20年ではわからないことがある」
という言葉が、印象に残りました。やってること、やってきたこと、は全然違うのですが、「手製本」というキーワードが縁となって、私は美篶堂さんと出会うことができたと思います。
製本自体はなんとなく習い始めてから20年。松男さんのおっしゃってる意味とは表面的には違うことかもしれないですが、20年では全然まだまだ、わからないことがある、ってやっぱり思います。
この「はじめての手製本」を技法書として見た場合、いろいろなことを考える。自分の教室や自分の技法書との比較を考えてしまう。
自分が生徒さんに手製本をやってもらう場合、はじめての人にもかなりやりやすいのでは、と思う方法に、なるべく作業を小分けにしていく。失敗をさけるためにかなりの手数を踏んで行く。それは、プロ(作ったものを適正な価格で売る人)としてはやりにくいことだ。私もその「ていねいさ」を繰り返すうちに、自分の技術が変容したのを感じる。ある程度の量のものをすばやく作業する機能は縮小し、丁寧さが増した。それを残念に思う時期もあったが、今はそう思わない。手数をふやすテクニックはたぶん、他の人にあまりまねのできないことだろう、と自負しているし、販売する製品を作るのに役にたたないからといって、無意味だとは思わない。
そうやって手数を増やした技法を本で説明しようとしても、煩雑すぎて受けいれられない、という印象を与えるだろう、ということでそこは、本ではカット。技法書では本当に「だいたいの印象」を伝えることしかできな。2冊目を作って、そいうある意味あきらめ、を持った。
美篶堂さんの場合、本来の仕事としての手製本があって、ワークショップでの教え方、っていうのが編み出されている。それがこの本には反映されているのだと思う。
で、自分もこのところ教室で使っているボンドは美篶堂さんで売ってるものと同じものを主として使用している。
自分が技法書を書く時はなるべく一般に手に入りやすいものを使う、ということで、木工ボンドとヤマト糊でokということして書いている。
実際に教室ではすごくいろいろな接着剤を使う。機能も使用感も違うので、できることできないこと、実にいろいろ。
美篶堂さんの使っているボンドは粘着力と乾燥後の柔軟性に特徴があり、私が丸背の製本のワークショップを受けさせてもらった時、ほんとうにそのボンドの機能をうまく使っているな、と感心した。ショップやオンラインショップで買えるようなので、この本の技法をやってみるとき使うといいとおもいます。