製本をやったり、教えたりしていて難しいのは、糊と刷毛。
カッター使いや何かは、説明するとわりにわかっていただけますが、糊は非常に困難です。
「こんな感じ」は使って味わってもらうしかなく、しかも、「どうやって着いているのか」ということについてのなんとなくでも物質的理解というのかそういうのがないと、味わっただけではできない、ってことになります。
基本的な使い方として、木工ボンドとでんぷん糊(ヤマト糊など)を混ぜる使い方をしますが、どういう意味でしょう?と問いかけても多分、答えられる人は少ないのでは。
また、「ボンドに水を混ぜると、早く乾いてしまいます」とか「ゆっくり時間をかけて糊を塗れば作業時間が取れます」とか、なんだか思っているのと逆じゃないという印象を与える言葉かな、と思います。
大概の方が、手早く糊を塗ってしまい、慌てて貼付けようとして、失敗します。
「ゆっくり時間をかけて塗って紙に水分をしみ込ませてください」、と言っても、「たっぷり塗るんですか、薄くですか」と質問を返されてしまい、言ってることの主旨を伝えることの難しさを感じます。
ちなみにでんぷん糊はなかなか乾かない、つまり保湿力があるので、紙をしめらせて柔らかくできます。柔らかくなっている紙は曲げやすいので箱などにそって曲げながら貼るのが容易です(曲げやすいから、粘着力はあんまりなくても大丈夫)
木工用ボンドはでんぷん糊より速く乾き、粘着力があるので、紙を柔らかくしないで、すぐに貼るのに適しています。速く乾くから、広い面積に塗り広げるには素早さが必要。花ぎれなど小さな部分を貼るのに適しています。
混ぜると両方の性質をかねたものとなります。半々だと適度に湿り気を保ち、粘着力も中くらいにあるということになります。
そして上記3パタンのどの場合でも、塗った糊の表面がちょっと乾き気味ぐらいが一番粘着力がある状態。
あと、小学生の時などにヤマト糊、フエキ糊を使っていて、「紙がぼこぼこになっちゃう」というでんぷん糊のイメージがあります。
紙は植物の繊維でできていて、植物の繊維は水を吸ったら膨張するから、起きる現象。
昔の人は障子をはったりしてるから自然にそれを利用してまっすぐにするということをしてました。美大受験の経験者だったら紙をパネルに水張りするから同じ事を理解してる、と思うのですが、なかなか。
糊がいけないんじゃなくて、そういうふうに使ってあげない人がいけないんだ、と言いたくなる場面も多いですけど、それを言ったらあんまり好印象じゃないよな〜と思ってあまり言わないです。私の欠点。(でもあるんですが、相手との関係をどのように処理していくかっていう態度の特徴でもあると思う。相手、っていうのは道具でも素材でももちろん人間でもある・・・・・)
職人は自分の道具を厳選して鍛え抜き、材料を吟味しますよね。
私の態度はそれとかけ離れています。いいかげんな道具を道具に合わせて使いこなし、どんな材料でも、なんとか形にすることが、かっこいいこと、だと思ってます。
とても熱心によくやった(と私は思っていた)生徒が
「糊の使い分けには最後まで迷いました」(もう20年近く前だから
言葉通りではない)と卒業の時に感想書いてくれて
ドキッとしました。
ざっくり言えば簡単だ と思うのは
まあこちらの考えで、初めて接した人にはそうは行かない
難しい
デンプン糊(paste,starch)
と
ボンド(膠:glue)の使い分けと
膠の場合は混ぜないのでしょうか(わ、ここはわからない)
木工用ボンドの容器には、デンプン糊と混合して乾燥が遅くなるという
意味の事が書いてあった場合もあります
ボンド7、デンプン糊3?までなら
水分で元に戻せる(可逆性)と聞いたような気がします
糊の使い分けは、「初心者」では難しいようです。
どこでこれを突破できるのか定かじゃないです。
10冊、20冊作ればわかってくる、でも3冊くらいじゃ
わかる人にしかわからない という事かなぁ
広いところに塗るのは、乾いてしまうので薄めに
狭い所を付けるのは 濃く
糊プラスボンドは
ボンドの容器にも場合によると、「デンプン糊を混合すると、乾燥遅くなる」と書いてあったと思う。
これは膠の時代にはしていない?
とにかく
糊(=デンプン糊:paste, starch)
と
膠:ボンド(glue)の使い分け
さらに濃さという事になる
もっと言えば、同じデンプン糊でも、気温、湿度によって違うのだろうが。
それよりも、たとえばレミ糊と正麩糊の乾き方の差の方が大きいとも思います。
(同じ正麩糊でも煮た感じは、ニシキ糊と紙舗直の正麩糊で全然違う。これは私がニシキ糊は煮ることができたが、紙舗直では、同じレシピでうまく行かない! という一度の経験だけですが)
木工用ボンドは酢酸ビニルエマルジョンの接着剤。にかわ、はゼラチンっていうかゼリーの元(つまり動物の骨や皮を煮たらでてくるもの。煮こごりですね。)と同じものですね。英訳すると両方ともglue(接着剤って意味)ってことになるんでしょう。
ややこしくなるので、にかわのことはちょっと除外して考えたいです。
本当はもともと本を作るのには基本となる接着剤なんですが、
私自身、本を作る時に使ったことはありません。
日本画では、にかわを使って顔料を画面につけます。学生の時、そうやって絵を描いた経験があります。また、洋式のテンペラの技法でも、キャンバスの下地塗りをにかわで溶いた白い顔料を使ってしたことがあります。こういった場合、前日から浸けたにかわ(三千本、と呼ばれる30センチくらいの棒状のにかわ)を湯煎してといたあと、水でうすめて使っていたように記憶しています。そうすると、ゼリーのように固まってきません。
本に使う場合は、にかわ鍋を使ってあたためたままて使うので、もっと濃い状態で使うのだと思います。
そしてにかわの利点は、水分が飛ばなくても、冷えたらすぐにとりあえず固まる、ということ。水性の木工用ボンドなどではなかなか乾きません。本ににかわが使われつづけているというのは、この性質のためだと思います。そのままどんどん作業をすすめられるということではないでしょうか。その点、ホットメルトに似ています。というよりにかわを真似たのがホットメルトと言えるのかも。
というわけで、あたためたにかわにでんぷん糊を混ぜる、ということは考えにくいように思います。
水で薄めたにかわは冷えて固まるという性質はなくなっていると思います。書道の墨は(たぶん不透明水彩絵具も)にかわが使われています。