教室の今年。
みんな技量アップをこころがけましょう、というか、私が言ったりしなくてもそう思ってる人が多いと感じます。
私自身が目標が何なのかはっきりしないのでこまってしまうのですが。
「ルリユールの10世紀(Dix Siecles de Reliureだったかな、イヴ・デヴォー著)」という本を久々に出して、見ました。というのも土曜の夜に来ているNさんは改装中の本を三方金(小口に金をつける)にして、本物の背バンド(芯が入ってるって意味)で、自分のデザインした紋章を表紙に入れる、という計画で、もう数ヶ月作業をすすめてます。それで、紋章とかの例を見てみようと、本を開いてみた、というわけ。
紋章のような大きい箔押しはうちの設備ではできないので、外注にたよることになるでしょう。どこまで手押しの味、というようなものを出して来るのか、考えようはいろいろあると思います。また、小口金付けも私の技術はいまいちまだ自信なし。練習と輸入素材で解決する予定ではあるんですが。
それにしても久々に、フランスの王様や貴族の本の工芸を見ると、やっぱりなんとも言えず、いいものですね。どっしりとした大胆な線の太いデザインが。もちろん「細かい模様」も沢山見えるのですが、それに支配されないどっしりとした骨格があるものが多い。
これらの本と自分との距離がどういうものなのか、わからない。
こういうことがしたいんではないし、ここに間接にでもつながってるフランス人ですらもない。
どちらかというと縁もゆかりもない、他人の作品。
それを見て、でも、いい、と感じてるだけ。
たまに師匠から電話がかかってしゃべると「まあ、曜さんが何をしたいのか、私にはわからないけどね」な〜んて言われちゃうことがしばしばなんですね。そんな時、なんかひやっとする。油汗のでるひやって感じ。しかし、それは昔に比べたら随分、微弱な「ひやっ」になってる。自分は「からっぽ」な人間だと思う自覚が前より多くなったから。
バレエを踊るプロには、それに適した骨格という才能が必要。ない人は他のことを。
私も自分で作りたい本はないのだから、ふわふわと、世のうたかたに流れていくだけの者なのだと思う。何かを残そうと身をけずる努力はできない。
目の前のことをできるだけちゃんとやる、それだけだ。
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