すっかり時間が経ってしまったが、前の前の日曜日は、東京製本倶楽部の勉強会で、ライブラリースタイルの製本の仕方を実習した。
藤井敬子さんに先生をしていただいて。
私も準備メンバーだったにもかかわらず、あまりお手伝いしてなくて、申し訳なかった。みなさんよく勉強していて感謝です。
19世紀半ばから図書館での手製本の需要が高まったイギリス。結果、外観重視と省力化で、品質が劣化して破損しやすくなった。
それに対する対策として、堅牢さを第一として考えられた方法がライブラリースタイルの製本。
外見は溝つきの丸背上製本。
特徴は、
①表紙芯のボール紙の作り方。ボードは2層にして、間に本文とともに糸綴じされている布がはさみこまれる。また2層のボール紙をずらして貼ることで溝の強度を増す、などの工夫。
②表紙と中身の接合をになう、見返しの作り方の工夫。
③表紙角のくるみかた。
などといったところか。個々の製本家によっていろいろの工夫がされているので、上記全部の特徴がライブラリースタイルすべてにあてはまる、ということではないようだが。
参考のページは
http://jadebookbindingstudio-jadestudio.blogspot.co.uk/2012_05_01_archive.html
http://blogs.yahoo.co.jp/azusa12111/53577570.html
私の作ったサンプル。構造があとでわかるように、一部クロスを貼らないでいる。
新聞に入ってるチラシで作ってみた。あとで見たら楽しいかな、と思って。
この勉強会をきっかけに、教えてもらった、
The Thames and Hudson Manual of Bookbinding (Thames and Hudson Manuals) Arthur W. Johnson (著)
を入手して眺めてみたが、すごく図がわかりやすい。
見返しの構成図もうならされた。勉強不足を反省させられるとともに、見返し〜1折目(場合によっては2折目までも含んで)の作り方がこんなにあるのか〜って思った。これは、英語読めないとか泣き言を言ってる場合でなく、通読しなければ。。。
といいながら、たとえば、見返しをこのようにして製本をされたような本を扱う、図書館に勤務しているないしは扱っている製本あるいは修復家の方は、どういった見返しがどういう場合なら破損しにくいかということを経験的に理解していることと思う。データもとられているのだろう、と想像する。
まあ、市井の、アートよりの怪しい手製本屋としては、そういった方々に話を聞く機会があれば、教えてもらう。普段は構造的にみて、こちらの方が良さそうだな、とか、ここまでやってるけど、意味はあるのかな、など自分の感覚的構造理解で対応していくしかないか、と思う。
それにしても毎度思うのは、洋式製本の複雑さ、である。複雑だから魅力あるのか。それもある。あるだろう。丸背っていうスタイルがなんでできたか、みたいなことからして。みんな、あの形にあこがれてるものな。
和本の袋綴じ、なんてシンプルでわかりやすいんだろう!ってあらためて思う。それぞれが、それぞれの状況の中で、選択してきた結果こうなったんだ、って、さらっとでも本の歴史を知ると思うのではある。民族性の違いとかいうんじゃなく、環境によってとてもやれることが決定づけられただろうな、と。
●羊皮紙から始まった西洋式製本は、羊皮紙が厚みを持った素材で両面に書けることから、折ったところに穴をあけて糸綴じする、中綴じとなり、丸背の製本を発展させた。
●薄い紙を漉く高度な技術をもった東洋では、片面に書き、袋折にして平綴じをすることとなり、線装(=和本の四つ目綴じなど)となった。
「環境」から離れていってるとともに、ネットで世界が狭くなっている現在は、状況が変わってきた。どの方法でも作ることは可能。素材だって手に入る。熱帯でも、もちろん日本でも、カビが生えないように空調された部屋で、西洋の革製本を楽しむことはできる!
が、やっぱり私は、環境に親しいものが良いと思う。
ご無沙汰しております。
テームズ&ハドソンの本、見てみたいな〜と思いました。
環境に親しいもの、同感です。