2014年10月17日|ブログ|個別ページ| コメント(0)
「クラヴサンとルリユール」チラシの裏面に、コラボレーションのいきさつを書いてみました。下記です。私のやってることは社会的認知度がまだ低いので、いつも説明することが習慣となっています。が、下記で誰にでもわかりやすくなったか、というとかなり自信がないです。。。。。。
まずタイトルからして、、、クラヴサンはチェンバロのフランス語、ルリユールは工芸製本のフランス語です。
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2005年、マイコさんは私に一つの面白い課題をくれました。「演奏会の時にさまになる革の楽譜挟みを作って」と。そして「楽譜たての上に置いた時に、演奏者の感覚の妨げにならない、チェンバロの繊細な音をさえぎらないもの」という条件もついていました。 私は、空気の行き来する透かし彫りのようなものを思い浮かべました。そして、その頃時々使っていた、アルミパンチング板(小さい穴が沢山ある板)の両面に別の柄を切り抜いた革を貼ることを思いつきました。音響のことは全く素人なので、その効果がどのくらいかは分かりませんが、マイコさんは満足してくださったようです。私自身もとても満足でした。写真を撮るために窓の近くにそれを置いてみると感動的にきれいで、森で道に迷って思いもよらない良い場所を見つけたような気持ちになりました。しかし、昨年個展をするまで、このことは一つの楽しい記憶にすぎなかったです。
私は大学を卒業した後、フランスで修行した師匠からルリユール(工芸製本)を学びました。が、本は内容あってのもの(そしてその内容を気に入っている依頼者あってのもの)なので、本の工芸で作家をするというのは意外に難しいものです。特に伝統も異なる日本ではなかなかとっかかりが見つかりません。製本教室をやり、時々注文で本をリフォームしたりの日々が続きました。
昨年、ようやく作家として個展をすることにしました。楽譜挟みならば本と違って内容はないですから、自由にデザインを展開することができるし、置きものとしても美しいと思いついたからです。これを「かげびょうし」と名付けヴァリエーションをいろいろ作りました。展示の時、前々から思っていた疑問「マイコさんはなぜ革の装飾的な楽譜の表紙ということを思いついたのか」を聞いてみました。留学されていたドイツでの体験?となんとなく思っていたのですが、向こうでは譜面、そもそも舞台での"みてくれ"のことはあまり気にしないとのこと。彼女も特に気にしないまま日本でコンサートを重ねていたとか。そんな中「演奏会は演奏そのものだけでなく、お客様が、総合的に美しく感じられるように!」とか「古楽器の魅力の一つともいえる装飾のスタイルと全く調和しないモダンなフォントが丸見えの楽譜」などを指摘するかたがいらっしゃって、少しずつ彼女の意識も変わっていき、私のルリユールのことが頭に浮かんだそうです。
今回、マイコさんの提案により、お互いのふとした「気付き」から生まれたコラボレーションを実現する機会に恵まれ、ここからまた何か新たなものが生まれてくる予感にわくわくしています。
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