2015年9月19日|製本と教室|個別ページ| コメント(0)
7月29日はJodyさん運転していただき、中沢さんとともにサンフランシスコへ。私の元生徒さんの米田晶子さんも加わって、SFCB(San Francisco Center for the Book) を見せていただき、創立者の一人Mary Austinさん、事務局長のJeff Thomasさんにもお目にかかることができました。ここも広いスペースに印刷と製本の装備が揃っています。
展示のスペースもあり、封筒の展示をしていました。こんなところで東京製本倶楽部との交換展示などができればいいね、と中沢さんJodyさん。
そのあとRhiannon Alpersさん のスタジオへ。
ここも古いビルを改装しアーティストが入れるようにしたところです。シェアしてるとのことですが、印刷機やら箔押し機やら全部そろって、広い!高い天井!の部屋。
ここでも10人くらいのギャザリング。 Courtney Cerrutiさん Jennie Hinchcliffさん(Red Letter Day) Casey Gardnerさん(Set in Motion Press) などなど。それぞれウェブサイトで作品が見れますから是非見てみてください。
気軽に作家同士が集まって、軽くつまみながら作品を見せ合うこのスタイルはとても交流にいいです。作者本人の近くで安心して本をめくり、細かく質問もできますし。
30日、サンタクルーズではfoolscap pressも見せていただきました。
ご夫妻で、活版印刷から紙の加工、製本まで全部を手がけている限定版の出版社です。普通の住宅なのですが、製本の部屋、活版印刷の建物、そのほかの機械の部屋など、ともかく機械が揃っています!(工場で使われなくなった機械を安く買い集められるようです。)
蛇腹折りの本で、数ページおきの挿絵をつなげて見られるようになっています。彩色はポショワールだそうです。
ブックアートを集めている大学図書館は予算があればこういう出版社の本も継続的に買うそうです。ブックアートというものが社会的にも認知されている様子を感じます。
近くのスタンフォード大学の図書館もここの本を継続的に買っているとのことでした。
私は留学をしていなくて、フランス式の手工製本を日本で教えてもらいました。が、なかなかそれを仕事化することができず、違和感を抱えたまま、製本教室を始めました。1995年から97年のことです。教室生徒さんの要望から必要にせまられて、最初は自分で知っていることの中から、独自にいろいろの製本を考えました。少したつと、海外から帰国した方からの製本の技法書や耳からの情報が入ってきて、手探りで試作をしたり、という時期がありました。いわば鎖国状態の中で独自に進化した製本です。(まだ自分にはネット環境もなかったのが大きいです。)
昨年、今年とMCBA他のアメリカでとても面白がられた実感がありました。大変嬉しかったのですが、自分が独自に作ったものがアメリカのブックアートの視点からも面白いものだったということ。広くて狭い「本」の世界の中で、自分がどこに居るのかは、相変わらずわかってはいないです。
表面的にはグローバル化が進んでいると見えつつ、人間の中身はまだ土地土地で随分違う心性を持っていそうだ、という状態が現在なのではないかと思います。そんな時「本にまつわるもの」を種目を限定しないで、いろいろ味わってみるのは面白いのではないかと思います。
一方では、小学生の時に「本が好き」と思っていたのとは、ずいぶん離れたところに来てしまったと感じてもいます。
別の言い方をすれば「本ってそんなに大事だって思わなくてもいいな」という感覚になりました。愛するものは、文字よりも物寄りになり、さらに何かを思いついた瞬間こそが楽しいので、そのために作ってる、という感覚です。
自分がやってきたことは、現在の状況では、アメリカ人からも面白がられ、理解可能な姿をたまたまとっているのではないか、と思います。どちらにせよマニアックな狭小世界ですから、アメリカだろうが日本だろうがその他だろうが、いったいどれだけの人が面白がるのだろうか、とも思います。でもいいんです。私はとても楽しんでます。そして、もっと(本という)制限なしにいろいろのものを考えて作ってみればいいんじゃない?、と背中を押された感じもしています。ワークショップで作った段ボールキューブ(Cardboard cube book)をアレンジして、帰国直前から直後にかけて、絵や言葉を書き込んで、こんなものを作ってみました。
さて、夏の思い出を書いて来ましたが、年末の個展(12月2日から7日、銀座のギャラリーおかりや)が迫ってきました。
多分「いろいろな感じ」(?)になります。
お楽しみに!
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