以下は、2015年の個展「けはいのしくみ」の時の説明文です。
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アルミパンチング板をアクリル板と組み合わせるアイデアは、2006年の自著「手で作る本」の中の作例からあります。いろいろの変遷をへて、今回は、ルリユールアンデパンダンと同様に磁石入りのフラップでノートなどを装着するものになりました。
アルミパンチング板はいろいろの素材の中でも段ボールと並んで、私の大事な素材です。 多数の穴によって、少し離れると半透明に感じられるのがふしぎな感覚。
工業製品のシャープな感じを穴を利用して縫い合わせて手芸感と混ぜられる。また下に柄の紙を置いた時の面白さ、それを動かした時の変化、モアレも楽しめたり。
アクリル板と合わせると、いろいろのものを挟め、曲げ弱い性質をカバーできる、という利点があります。(アクリルは傷つきやすいのであらかじめ砂でこすって大きく傷をつけています。) 私の収集物をいろいろはさんで、デザインにしてみました。
さて、開発秘話っていうか、そのようなものを一つ、二つ、三つ、ネタばらし。 最初にアクリル板と合わせるアイデアを思いついた時は、パンチングの穴からドリルを入れて、アクリル板に穴を開けていました。レーザーカッターを使うようになって、図面を作れば、レーザーで穴あけができちゃって楽だ!と気づき、手伝ったもらってる津村さんに図面を作ってもらい、やってみましたが、2度ほど試して、挫折。穴位置が合わないのです。工業製品だから正確に均等に空いているであろうと思った穴は、開ける機械の構造上それほどの精度が出てないことを知りました。で、結局現物に合わせて一つずつ(というか、一枚のアルミ板に対して、二枚のアクリル板と革の重なりに開ける)ドリルでということになりました。番号をふってどれがどれってわかるようにしなければならないのがかなりの手数でしたが、なんとかこなしました。 もう一つ。このパンチングボード、穴は直径1ミリ。だからはじめはアクリルに貫通して穴を開けるのにも1ミリのドリルを使っていたのですが、それでできた穴だと、ごく細い針と糸しか通らないので、針を使わずに、糸を糊で固めて通したりしていました。しかし、これが手間。最終的には1.2ミリ径のドリルで穴を広げながら貫通することにして、簡単に太い糸で縫うことができるようになりました。 それから、アクリルは傷がつきやすくてこまります。パンチングボードを合わせるとかなり傷が気にならなくはなるのですが、それでもやはり。そこで今回はあらかじめ傷をつけることにして、砂をまいてその上をじょりっとこすりました。なるべくかっこいい傷がつくように。使うときもどんどん傷をつけましょう!(缶詰がへこんで商品にならなかったり、カバーがやぶれた本がカバー換えで版元に戻ったり、あまり意味のないこと手間をかけるのはどうなんでしょう?と逆の手間をかけてみました。)
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