「知日」という中国の雑誌からの依頼で、自作を紹介する記事を書いた。先日2回目の依頼があって、本当に連載なんだ〜、と思った。2回目の自作紹介が結構うまく書けた(つもり)なので、下記に転記する。今、ちょうど1回目に書いた雑誌が出たところらしい。特集は「芸術力」だと。まもなく送られてくるようなので、それも楽しみ。そちらの記事の原稿もいずれアップします。「知日」に出ると、どんな影響があるのかそれも楽しみ。(っていうか、これ、中国語で訳すとどんな感じになるんかな?)
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「雲に乗るコナラ」 山崎曜 作
2015年12月の個展「けはいのしくみ」(ギャラリーおかりや、銀座、東京)のために制作した作品です。この個展のDMに使った作品の一つでもあります。アルミアクリルノートホルダーと名付けたタイプのもので、名前の通り、ノートやソフトカバーの本を挟む機能を持っています。この作品の場合は、A6サイズ(148×105ミリ)のノートや文庫本などを挟むことができます。
これは一見、機能をもったノートカバーの実用品ですが、私の狙いはそこだけでなく、むしろ身近で実用しながら楽しむアートとして捉えてもらえないかということでした。絵や彫刻のような昔からあるアートは「眺めて楽しむ」ことに用途が限定されていると感じますし、一部の高額所得者以外は、美術館で楽しむか、印刷物で複製を楽しむか、です。普通の生活の中にそういった楽しみを持ち込むことはなかなか難しい。生活の中で持ち歩いたり、触ったり、眺めたりしながら使って、本当に一人とか周りにいる数人の人に見せたりとかで楽しんでもらえたらいいな、と思ったのです。言うなればこれも一つのブックアートだ、というつもりです。そういうわけで、この作品には、それらしい名前をつけました。「雲に乗るコナラ」です。薬局で売っている普通の脱脂綿を雲に見立てて、ふわっと広げ、コナラの新芽を押葉にしたものを雲の上に乗っているかのように配置しました。コナラは懐かしい武蔵野の雑木林を代表する木で、春の芽吹きの時の、銀白緑色はとても美しいものです。私は毎年、春の嵐の後に、落ちた新芽を拾いに行って押葉を作ります。コナラの新芽はビロードのようにびっしりと毛が生えていて、角度によって輝きが変わり、天然のものとは思えないような美しさです。春に落ちてしまった新芽が、黒い空の白い雲に乗って、どことも知れない場所に旅立っていく。このあたりの「見立て」とか「空想」については、「どうぞご自由に!」です。
これらの押葉や脱脂綿は、黒のアルマイト加工のアルミパンチングボードにごく少量のボンドを使って固定し、薄いアクリル板で両面を覆って挟んでいます。アクリル板はパンチングボードの穴に揃えてドリルで穴を開け、麻糸で縫い合わせました。背の部分は山羊革と牛革の貼り合わせ、内側にあるノート等を装着する部分は、麻の生地の内側に0.5ミリ厚10ミリ径のネオジム磁石8組16個を組み込んで、吸着するようにしています。
このように、持ち歩ける実用品で、アートでもあり、そのどちらの概念においても中途半端な存在でありながら、持つ喜びに訴える「本のようなもの」を私は作りたいのです。この時の展示のタイトルの「けはい」はアート部分を、「しくみ」は実用部分を表しているということもできます。
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