まちライブラリーを始めたい。
脱出口はここにあったな、と思った。
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今の私は、生徒さんがもってきてくれたものから成り立っている。
そんな感覚が強い。
このところ、オンラインで出会った反転授業の研究グループに参加するようになって、「学び」ということを意識的に考えることになった。そして、うちの生徒さんたちから実に多くのことを学んだな、と改めて思うようになった。
20年ほど前、製本の教室を始めたころ、私はここに居て、ただ待っていた。できるのは待つことだけだった。何かを求めて、探しに外へ出るということが苦手だった。それは子供の時期の、好きな昆虫採集においてすら。養老孟司さんたちマニアが昆虫を求めて、海外へどんどん行くのを耳にすると、すごいな〜と思う。私の小学生時代は、ただ誘蛾灯で蛾を待つこと、甲虫を待つこと、だったな。と。
もちろん、教室を始めた時、チラシを美大や知り合いのギャラリーに置いてもらったりはしたし、たまに雑誌に載せてもらったり、もあった。でも到底熱心な営業とは言えない。
それでも、どうしてみつけたんだろう、っていう感度のいいアンテナを備えた人たちが来てくれた。(まさに暗い夜に、ポツリと青い誘蛾灯をつけてるだけで、いろんな美しい模様をした蛾が飛んでくる!)そういう人たちの要求によって、今思うと最初はほとんど何もできなかった私は、実にいろいろなことを手に入れていった。求められるたびに思索して試作したやったことのない製本はもちろんだけれど、じっと10年くらいもやっていると、技法だけじゃないいろいろをも学んだと思う。
例えば、仙台や新潟や三重から、時には夜行バスでやってくる生徒さんたちが居る。10年以上ずっと私は、ただ彼らが来てくれるのを待っていた。が、こんなトランクに、こんなふうに荷物を詰めて来るんだ〜とか、予約ってこうするんだ、とかいろいろなトラブルとか、旅のこつを耳学問していた。随分経ってから、彼らの気持ちってどんななんだろう、自分も体験してみたいな、思うようになり、試してみるようになった。出版本が出てからは、香港やシンガポール、アメリカからも来てくれる人がいて、彼らがもともとは出不精だった私を海外にまで連れ出してくれた。
作る態度についても学んだ。
生徒さんはいつも「やりたいこと」のイメージをを出してくる。
初期のころ、私はだいたい、次の週までに対策を考えていた。試作をしたりして解答を用意するのだ。
ある時、結構難しくて、全然イメージが固まらない時があった。でもしばらくすると、これはいいな!という解決方法ができた。次の週に、待ってましたとばかりに、そのやり方を披露しようとしたら、その生徒さんは、「あ、それはもういいから」と全然違う方向へ作業を持って行ったのだ。かなりショックで、がっかりして、腹立たしくもあった。
が、ここで、「あ、そうなったのね」と、受け入れることができたことがとてもいい勉強になったと思う。
どういうことかというと「その時のフィーリングを大切にする」ということ。アーティストはこうでなくっちゃね、とも思った。彼女の作る作品はとてもオリジナリティがあって、色彩豊か。こういうブックオブジェだかオブジェブックだかわからないが、そういうものを作る人が居るんだから、私はそれに類するものは作らなくっていいや、と思ったし、彼女の「ちがうな」と思ったら人のこととか気にせず、すぐに自分のフィーリングに合う状態に変更していくということがとても大切、と感じたからだ。
それ以降、私は現場力というか、その場で解決することに、より注力し、準備をあまりしないようになっていった。
思いついたら、現場で、生徒さんと一緒に作る。そういう時間は、いくらでも生徒さんたちは許してというよりも逆に喜んでいっしょにやってくれるし。準備をしていたとしても、そのように進むかは生徒さん次第。だいたいがいろんな予測不能なことを思いついちゃう人が多いのだから、もう現場でやった方がいい、となっていった。
ちゃんとした手順がある製本のやり方から考えたら、ここからそういう展開はあり得ない!ということがしょっちゅう。
でも、数が大量にあるわけではないから、変更や直しはいくらでもやれるし、なれてくると、失敗を求めるようにもなっていった。
なぜなら、失敗(つまり予定してたことがうまくいかなかった)した時は、いつものルートは通れなくなっているので、別ルートをとるしかなく、そうなると新しい発見の可能性が出てくるからだ。実際そうやって何度も何度も新ルートを発見していったのだ。これは実に心踊る体験だった。
そんなことをしているうちに、それを面白がってくれる生徒さんが企画を通してくれて、文化出版局から2冊も本を出すことができた。その時は、自分が発見して理解したやり方を全力で書き込んでいった。アマゾンのカスタマーレビューで「こんなやり方はうそだ」的なことを書かれて、その時は傷ついたけど、今はむしろ誇りたい感じ。いままでと違うやり方を書いた証だよ。
さて、やっと冒頭に書いた、「まちライブラリー」のことになる。
礒井純充さんを紹介してくれて、うちの教室にまで連れてきてくれたのも、生徒さんだった。
手作りの、一般の人がなかなか目にする機会がない本を、見せる場を作るというのが目玉なライブラリーをやってみたい。(自慢の道具(!?)も売りたいな〜って下心もある。どうも、オンラインショップにいまひとつ踏み切れない、自分。)もちろん、私の趣味全開の、いろいろの本も並べれば、自分ワールドでありながら、人といくらでも絡んでいける場になるのではないか。ヒッポのこともちょっとやったりもできるかも。うわーそうしたらかなり楽しいんじゃないだろうか。
秋に(晩秋?)になんとか始めたい。
という妄想をいだきながら、去年の追加注文などをこなす(!今頃!)。。。
こちらは真鍮の丸棒で、箔押し機を使って、金押しをしてるとこ。
裏側のフラップのとりつけ。雪柄がかわいいでしょ。
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