4月から始まった、酒井邦嘉先生の『チョムスキーを読む』講座(具体的には『統辞構造論』をだいたい毎回1章ずつ読みます)、先週は4回目、第4章の句構造文法のところでした。
ここまでの理解もなかなかあやふやなのですが、とりあえず、今感じてることを書いておこうと思います。
まず、私が何をわかりたいのか、ということを書いてみます。
生成文法という考え方をチョムスキーが提案したが、それから半世紀以上たって進化をとげた現在の生成文法の姿は、初期の著作『統辞構造論』を読んでも、わからないらしい、ということはなんとなく知っています。
私の知りたいのは、チョムスキーが生成文法という考えに至った理屈の筋道とか、どうやって人間の言語というものを「科学的に」理解する方法を考えていったのか、というあたりです。
科学的に理解しようとしないかぎり、ことばっていうのが何なのかはわからないと思います。ことばというものは、人間が作った機械などのしくみのようなものではなく、自然物らしいと感じはします。
自然物は、さまざまに変化をするけれども、なにか秩序を持っている、という印象はあります。たとえば葉っぱとか動物とか基本的に左右対称にできていたりしますね。
一方、人間が作るものは、あらかじめ秩序を決めて、それに沿って作っていく印象があります。
そして、ことばは、人間の作ったものではなく、自然物なんだろうな、と思います。
自然物の秩序を解明するには、科学のやりかたがとても有効なのは、ニュートン以降の物理学、特に19世紀以降の産業革命とか見れば、よくわかる気がします。
ことばが自然物ならば、科学の方法を使って考えてみようとするのはとてもよくわかる気がします。
さて『統辞構造論』で、とっかかりとして使われるのが有限状態言語。シャノンがこの考えを使って、今のコンピュータの元を作ったらしいです。私、内容をいまだちゃんと理解できてません。
説明は、ab、aba、abab、ababaと表現できる言語で、aの次はb、bの次はa、という規則だけでできているものとのこと。なぜこれでコンピュータができるのか、をもうちょっと勉強しないと全然わかりません。(何冊かシャノンについての本見てみたのですが、まだ全然わからない。)
この有限状態言語では、英語(自然言語っていう意味なので、日本語でもドイツ語でもいい)は書き表せない、ということが主張(というか証明、あるいは自明だと)されます。
人間が作った秩序であるコンピュータの元となっている言語で、もしも人間の言語が説明できるのなら便利だと思うのですが、そうはいかない、ということですね。
では、どんな手段がありうるのかを考えるために、まず、有限状態言語で書くことはできないが、やはりシンプルな言語をいくつか想定します。
これが、カウンター言語、鏡像言語、コピー言語です
(これらは徐々に複雑化します。『チョムスキーと言語脳科学』の125~136ページあたりにくわしく説明があります)。
これらを理解するための方策として、句構造文法(またの名を構成素分析)というものが提示されます。
構成素分析(句構造文法)は、見た目、明快です。学校で習った文法も思い出させるようなもの。文を名詞句、動詞句にわけ、名詞句を冠詞と名詞にわけ、というように、分けていき、樹形図ができます。
それはそうなんですが、ここで提案された[Σ,F]文法、という考えが大事らしい。句構造文法を示しているものだと思うのですが。ちなみに[Σ,F]文法というのは現在は使われていない表現だそうです。
Σは文を示し、Fはそれの書き換え規則を表しています。例として、
Σ:Z
F:Z→ab
Z→aZb
というのが書かれてます。意味するところは
Zという文があり、
書き換えの規則は
そのZをabと書き換える、
また、ZをaZbと書き換える。
の二つ。
このZという概念が非常に画期的なものらしいです。
この画期性を、うっすらとは感じるんですが、まだまだピンときてません(実際の文には表れていない概念を表現しているということが画期的です)。
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人間のことばを科学で理解しよう
↓
有限状態言語で解明できないか
↓
できるものもほんの少しあるが、ほとんどできない
↓
句構造文法ではどうか
↓
できることがだいぶ増えるが、やっぱりできないことがとても多い
↓
ではどうする
というふうに話が進んできてます。
2~3年前『統辞構造論』を友人と輪読し、原著の『Syntactic structures』を英語もできないのに輪読しました。その時は、わからなさにびっくりしましたが、今はそれはなくなって、全体の流れはわかるようになりました。
自分としては、一つ一つの考え方がとても面白いと感じています。ちゃんとわかっていない私の文は、まだ全然ちんぷんかんぷんだと思いますが。
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