先日、「知日」(北京で出版されてる、「日本」専門誌)が届いた。連載1回目の私の記事は中国語でどんな印象に訳されたのか、自分で味わえないが、雑誌全体の雰囲気を楽しむ。「現代日本の芸術力」特集。
私の記事は、日本の芸術力特集とは関係のない、レギュラーのページにある。↑
雑誌の最後の方には中国語日本語併記の記事があって、それは、日本のお正月に、商店街のお餅つきに参加したレポート。読んで、ほのぼのした。
来週から、中国の人が私の教室を受講に来る。これからどんなふうに中国の人とかかわっていくことになるのか。すごく楽しみだ。(特に、このところ「魂の脱植民地化とは何か」深尾葉子著、「生きるための論語」安富歩著、などを読んだ私の中国人観は、それ以前とは全然違ったので。)
以下は、「知日」連載3回目(これで連載終了)の原稿。
知日の編集の人のリクエストのままに、3回書いたのだが、2004年、2015年、1999年の作品を選んでくれた。
(「空の鳥」懐かしいなぁ)
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「空の鳥」山崎曜 イラスト・文・製本 作
大学を卒業後、手工製本の技術者に弟子入りし、フランスの工芸製本の技術をおぼえた。しかし、高級な芸術的雰囲気も、革や金という素材も、どこか馴染みきることのできないもので、違和感を持ったままだった。もっと自分らしいものが作れないかと、製本技術習得後はじめての個展「飛ぶ本」(すどう美術館、銀座、東京、2000年1月)のために作った作品がこれ。同じものをいくつでも作れるのが技術の証と思い、25部を製作。
16年後の現在から見ると、工芸製本に対しての反抗心が感じられる。表装材は、革ではなく布(絹)。表紙の芯は重いボール紙ではなく軽いベニヤ板。判型は小さく横長な形(97×147×26ミリ)。本文の内容は高尚な文学作品でなく、自作のちょっとした文とスクリーン印刷で刷ったイラストを入れ、ページを四角くくりぬいて、表紙と共布の折り紙で鳥を作って入れた。くりぬいてあるページには銀色で雲が刷ってあり、ぱらぱらめくると鳥の周りを雲が動いていくように仕掛けてある。
文章の内容は、メーテルリンクの「青い鳥」を踏まえて作ったもの。私の元に居た青い鳥は、飛んで行って空の青に溶け込んでしまうが、ずっとこの本の中の空を飛び続けている、というイメージを表現した。鳥と空の青をイメージした青い布で外装と折り紙の鳥を作り、鳥の暖かな羽毛の様子を掌に感じるようなふっくらした外形で、手の中に収まるサイズの本になった。
私が手作りの本にフロンティアというか活路というかを見出したのは、文を書くことや絵を書くことで世界を表現するのではなく、本という仕組みで世界を表現してみたい、という欲望に駆られたからで、それを素直に表現した作品と言える。
以上、作品説明を書いてみたが、結局自分にとって一番楽しく、やり甲斐のあることというのは、ベニヤ芯の表紙の四隅にシャープなエッジを残して演出することとか、内部に収める折り紙の鳥の厚みを抑えいかにして美しく収めるか、とか、そういう細部を作り込むことである。今は製造中止になってしまった家庭用の印刷機プリントゴッコで、銀色の雲が動くように印刷するのはとても難しかったが楽しかった。
デジタル機器が非常な進歩をとげた現在、例えばレーザーカッターなどを使えばこれができる、ということで刺激を受け、アイデアも出る。だが、自分のこだわりは「何を表現するか」ではなく、あくまで「手や身体が楽しむものづくり」であることは変わらない。その原点とも言える作品だ。だから何が表現できたかという意義よりも、手作業での細部の解決策に満足したからそれでよしと思っている。
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