よく聞いているYouTubeの、積読チャンネルで
「計測」は人類に何をもたらしたか?
というのをやっていた。『計測の科学』という本を紹介していて、とても面白かった。
最近またまた「測る」が気になっているので、タイムリーでもあった。読んでみたい。
自分のやっている手工製本も、当然、測って作っています。
どのように精度よく測るか、というのは非常に大事。
が、私の場合、量産の本の設計をするのではなく、一点だけのものを作っていることが多いので、そこでの「精度よく測る」ということは意外な展開を見せたような気がしています。
私の師匠は、手工製本でかなりの数の同じ本を作るということを仕事をしていた。
だから、私は、見習いで、サイズ測ってを数値を出し、断裁機を使って精度よく材料を切る、という基本を知った。
そのあと、私は製本教室をやるようになり、生徒さんの要望やら、注文主の要望やらで、一点づつ作るということに対応するようになった。そうすると、ともかく現物に対して正確にということになる。正確に3ミリの
チリ(表紙が本文より出っぱっているところ)があることよりも、感覚的に「このくらい」の大きさのチリがどの辺にも正確に同じに、ということが重要になっていった。
そうこうする内に思いついたのが、紙定規というもの(
ここで詳しく説明してます。
YouTubeではこれ)。現物合わせに機動性を持たせるというか、非常に便利なものだった。紙定規を現物にあてて点を打つ。
その点に対して、表紙をこのくらい大きくしよう、という点をうつ。その点をつかって、2枚の表紙を同サイズに切ることができる。
これを使い倒していって、楽に速く正確にミスが激減して、しかも再現性がある作業できるようになったのだった。
めでたしめでたし、なのだが、近頃、エクセルを使うようになって(というか、問題を感じてエクセルを使うようになった、とも言える)別の展開をしなければ、と思う。
一つには2017年にヒッポの仲間と行った、アフリカでの体験がある。
トーゴはカラフルなデザインの布が素晴らしい。町には仕立て屋さんが何軒もあり、布を持ち込むと翌日とか翌々日にはさっとシャツに仕立ててくれる。当然おみやげに何着か作ろう、となった。しかし「本人がいないと作れない」というのである。しかたがないから、行った何人かで、だいたいこの人くらいのサイズです〜とやってなんとか仕立ててもらった。
ずいぶん後になって、ふと、この件、自分に似てないか?と思ったのだった。
具体的に「その人」がいれば、測ると数値が得られ、さっと仕立てられるが、Lサイズ、Mサイズといった「割り出された平均値」みたいな定型を持っていないということなんだろう。
服の事情とは随分違うが、私の場合も、現物があれば、試作を繰り返しつつ、手早く完成できる。
しかし、あたりまえだけどエクセルはとても簡単に四則計算をしてくれる(時々ルートも使うけど必要なのはそんな程度)。だから材料の厚みまで入れて数値化するのが楽々。
元々は厚みまで入れて計算するのは馬鹿馬鹿しいと思っていた。
例えば表紙の芯のボール紙を切り、その周りに布だの紙だのを貼ると、当然サイズが増えるのだが、単純に布の厚み分を増やせばいいかというと曲げた時に膨らんだりするのでそうはならない。溝のところを押し込むと、サイズが変わる、などもあり、都度都度できたもののサイズを測って次に必要なサイズを決める、というのが一点ものの基本なのだ。あらかじめ予測して計算するのは面倒だし、やったとしてもあまり正確に合わないのだ。
が、である。エクセルで計算すると、明快に数字が残っていくし、実際に作った時に、どのくらい違いが出たか、ということも把握できるので、実作時に測りながら進めていけば、実際はどのくらいの数値にすればよかったのかがわかる。
実測、設計、実作、修正データが得られる、ということが可能になった。すごく当たり前のことなんだけど、今までなんの数値的記録を残さなくてもちゃんと作れてしまっていたものに、すべて数値が残る、ということが大事と感じているのです。
全く遅いよね〜(まあ、紙定規は実測にも有用ではあります)。
数値になってれば、あとでどうとでも利用できるものね。
今知らねば、と思うのは「精度」とか「誤差」とか「許容度」の考え方。
手工製本で使うのは、基本的に目で見えてるサイズ、触って感じるサイズなので、長さでは0.25(1/4)ミリ、厚みは0.02(1/50)ミリくらいのところまでで必要十分。そのあたりの数値の処理がまだよくわかっていない。
さて、最後になりましたが、最初の写真の説明です。
ダイヤルシックネスゲージという道具で普通のコピー紙(68g/㎡)を測っています。厚さ0.08ミリを指しています。
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