先日仕上げた、『しりあがり寿 湯布院洞窟風呂展 大型本』
の製本工程を毎日1~2分ずつ動画にしてアップしてみることにした。
現在の展示は5月6日までなので、それまで毎日アップして、全工程が紹介できたら面白いかな、と思っている。
これをやることになった経緯は以下。
一昨年のこの↓展示の絵を解体したものを「本化」してほしいということで、昨年6月、伊藤剛好さんと小林雅子さんがご依頼くださった。
膨大な量の障子紙でギャラリーが「洞窟風呂」となっていた様子が窺われる。伊藤さんと小林さんが、この中から絵をチョイスし、お持ちくださった。せっかく面白い企画なので、なるべくまめに動画を撮りながら作った。
そうこうしていると「息をするように動画を作る」っていう言葉が頭に出てきた。頑張らないでも、気づいたら撮ってる、編集できてる、というふうにならないかな〜と思ってるんだろう、自分。
背の開閉部と小口の雰囲気をみていただくと、和本的(つまり、袋折で平綴じ)なものだとわかる。
背がべったり真っ平らになっていて、袋折になってる小口が少し膨らんでいる様子。
拡大で背の部分を見ると完全に背に貼り付いていて、紙の柔軟性だけで本がひらいていることがわかる。
動画だけで説明しよう考えたが、
本の構造は、作業だけからはわからないと思い、概念図の必要性を感じた。
イラレがいまだに全然不自由にしか使えないので、それはこれから鍛えるとして、とりあえず、手書きの概念図をここに載せておく。
ページの構成は上の二種類。そとおもてに袋折にした間に、枕(まくら、厚みを出す厚紙)を挟んである。本文がものすごい貼り合わせやしわしわに折られており、厚みが不揃いでふかふかなので、背をがっちり固める必要があり、この枕が必須。AFハードボードという0.45ミリ厚の保存用のカード紙を使用。
見開きで見せたいものが6セットあり、それについては上記のようにM字に折って、真ん中の谷のところに足の紙をつけ、それも綴じた。こうすることで、平綴じだが、見開きがきれいにのどまで開く。
普通の袋折のページが52セットあり、M字が6セットだから、全部で袋の数は52+6×2=64。ページ数でいうと128ページとなる。
一つだけ細長〜〜い人の絵があり、それだけは折り畳んで収めた。
ハードカバーの表紙の付け方は、図がわかりにくく、申し訳ない。赤い点々は接着を表している。
上の拡大写真でなんとなくわかっていただけるだろうか?
一般的なハードカバーとは違って、表から見えるミゾがない作り方。
表紙と背の接合する箇所のボール紙を斜めに削いで、外からも内からも製本クロスで貼って、開閉できるようにしている。
概念図を書いたら、工程表も要るな、と感じた。
工程表は作業全体の俯瞰図のようなものだから。次のブログで発表しよう。
作業自体は、動画を撮るとともに、常にエクセルに数値を記録しながら進めているのだが、記録の仕方がまだまだ改善しなければならない気がしていて、すっきりしていない。
今回工程表をまとめるにあたって、少しでも整理できればうれしい。
概念図、工程表、そして動画。
この3つのセットで、どこまでわかりやすい説明ができるか、試してみようと思う。
ここのところ頑張って作っていたのは、この本。
縦が70センチくらいある、大きい本。もともとは、ギャラリー中を洞窟のように内側から覆った展示だった絵を本の形にした。
構造は、和本のような袋折の平綴じで、中身の背を表紙の背にベタに貼り。外見上の溝はない。
最初は溝のある普通のハードカバー角背にしようと考えていたが、重くて大きい本だと、溝から背にかけての構造が弱く、壊れてしまうと思った。中身の背をベタに表紙の背の内側に貼ってしまうシンプルな仕組み(元々は自著の作例として考えた形)にすることにした。この仕組み、普通の紙では開きがとても悪くなるが、今回のは大きくて柔らかい障子の紙なので、開きはよいことも好都合だった。
本が大きくなると、なにかと普段通りにはいかないことが多く、一つ一つ積み上げて丁寧にやっていく作りになった。詳しくは、製本中の動画をアップできたらいいな、と思っている。
某アーティストの本の製本をしている。展示で障子の紙に描きまくったものを、なるべく生かして、そのまま本の形にする、っていう、面白いもの。
30年余り手製本をしてるけれど、勉強不足でいつも不安なまま。よくこんなに諸々知らないことだらけでやっちゃってるなぁ、と思う。
努力ができない。前回もそんなことを書いたけど、自分が面白がれることに、ゆる〜っと入っていくのでないとなかなか波に乗れない。
決まり事を勉強してからやる、というのがほぼできない。
その点、もともと本でないものを本の形に仕立てる、というのはとても、私にとって楽しい。しばりがないので。
私にとっても、頼んでくれてるギャラリーの人たちにとっても初めての試みなので、こんな形にしたい、というふわっとしたイメージに、私の経験からのこうやったら本になりそう、っていう構造をまぜて、やりかたを決めた。
でも実際にやったことはないから、小さめのダミーを、障子紙で作ってみた。
小さめと言っても、縦が50センチ弱。試作だからと、逆目に紙を使ったこともあり、途中ふわふわふにゃふにゃしてだいじょぶかなという雰囲気だったが、枕(綴じの付近につける、厚みをつけるパーツ)をつけて、貫通穴に麻紐を通して綴じたら、いい感じ。
本番の完成を、自分がわくわくして待つ。
エクセル遊びが、ずいぶん楽しくなってきた。
去年のブログ再開から何回書いたかな、エクセルについて。
やっぱり、なんでも、触って使っているうちに慣れていくものだな、と思う。
ファイルボックス(写真右下あたり)に紙ヤスリとか楮紙とかなど、教室で使うシート類を入れているが、それをアイウエオ順に並べて整頓したのは2023年12月18日。一年以上前。こうして局部から、整頓は始まったのだった。
それから、道具ボックス(写真右側)、収納ボックス、と整頓の範囲を広げ、このところは家の中を地図化するということを思いついた。部屋の収納スペースに左回りの螺旋状にナンバーを振った。収納したらその番地と配置したものをエクセルに記入する。
私は、どこまでが仕事でどこからが家事でという区別が無いのが、コロナ中からより強まった。
区別をつけてちゃんとやろうとしても、自分は動かないのだった。そして、ようやくそれを諦めた。この怠け者の好きにさせるのが結局一番働かせられる、とわかった。
以前、まずものを捨てなければ、と思っていた。が、これを一気にやる(こんまりさんのような)のが全然できない。やる気がでない。仕方がなく、いつ終わるともしれない整頓を始めた。でも、捨てる以前に、まず、今何を持っているのかを正確に知る、というのが大事なんだな、というのが最近の実感。
そして、ものの分類や配置がリアルにはできていなくても、エクセルに「ことば化」して入れておけば、概念の上では整頓されてる(=どこに何をどれだけ持ってるか知ってる)っていうのが、すごく心強い。
製本を教えるのが私の仕事なので、その「優れた方法」を目指していたと思う。それで苦しくなっていた。
でもそんなのは無いと思う。いやそれは言い過ぎ。自分には優れた方法は作れないなぁ、と諦めた。
(っていうか、ガラパゴス的に進化して、自分にだけやりやすい方法になってる気がしてる。そしてそれはもう引き返せない。)
もはや、みんなにやりやすい方法なんて、考えられないのだ。
だから、ただ、そのときにこう考えてこうやった、っていうのは記録しておこう、って考えるようになった。
そうしたら、やる気がある状態になっていた。
必要になったとき、それを取り出して共有すればいい。
それで、動画が「教えようとする」から「とりあえず記録」に変わって、普段やってることをまめに撮る傾向が強くなった。
そうすると、あとで簡単に取り出せるように、どう格納しておくかが問題になる。そうして、年月日時分までをファイル名に入れる習慣を身につけた。これでとりあえず時系列は一つの線に並ぶから混乱しない。
その上でエクセルに入れて、キーワードも入れておけば、必要なものをかなりスピーディに取り出すことができる。
こんなことは、当たり前のことなんだろうけど、やっと理解してきたと思う。
コパイロットやジェミニのおかげ。
穴あけ台の動画をアップした。
本は、紙に穴をあけて、そこに糸を通すことで作る
(糊を使うパターンもあるが、それはまた書いてみたい)。
その穴をどうやって開けるか、というのは結構、いいテーマだ。
いろいろな可能性が考えられる。
洋風の手製本で使うのは、のこぎり。
折を束にして、よく揃えて、切り込む。目引きと呼ばれる作業だ。
目引き、こんな感じ。
挟むためのプレス(上の動画では手締めプレス)、のこぎり、当てるボール紙などが必要。
そして、歪まないように、きっちり挟むのが難しい。真っ直ぐのこぎりで切るのが難しい。
というわけでちょっと体験したい人には教えにくい。
最近になって、ほぼカッターだけでやる方法に辿り着いた。大学などでは、これを使う。
切り込みによる穴あけ
目引きのいいところは、のこぎりの厚み分、削れて穴があくこと。
カッターで切り込んだだけだと「穴」ではないので、洋風の製本のやりかただと糸の収まるスペースを作ることができない。(逆に和本の列帖装だと、絹糸が食い込んでしっかり止まるので具合がいい。)
上記の、のこぎりでの目引き、カッターで切り込む、のほかに目打ちで開けるというのがある。
これは、子どもワークショップで
針を使わない三つ目綴じ
紙を折る前に穴をあけ、糸で綴じてから折る、という方式。
なぜなら、折ってから折り目に目打ちで穴をあけようとすると、必ずずれてしまうから。
そんな時に、今回動画をアップした穴あけ台が必要になる。
が、使わなくて済むならできるだけ道具が少ない方が、いろんな人ができるだろうと思って、最初はこんな提案をしていた。右下の図。『手で作る本』(P.90、2006年、文化出版局)から。
45°などと書いてあるが、これをうまくやるのはけっこう難しい。あとから思いついたのは、全体の下にスチレンボードを敷くこと。そうするとプスッと目打ちの先が刺さるので、ちゃんと穴があく。
まあ、それでも難しさは変わらない。
このスチレンボードが拡張していったのが、こどもワークショップでの段ボールのぐるぐる。
そのあと、箱に詰める方式も作った。
話がいろいろなところに行ってしまうのだが、上の図の右上の図。これは目打ちを木槌などで打つ時の型をあらわしている。六角形をした鉄の鋳物(だと思う)の目打ち。下に木のブロック(木口を上)を置いて打つとスコッと刺さって気持ちがいい。のだが、音が出るのと、やっぱり道具が多くなるので、一般向けワークショップでは使えない。
その点、段ボールの台は音がでないし、木槌も不要なのは大きな利点。
さて、今回の動画をアップ途中に、イギリスの製本の本に紹介されてた方式(真ん中のもの)
ひさびさに取り出してみて、これもほんとによく工夫されてるなぁ、と思って、それ風でもちょっと作ってみたが、まだ、いまいち。
あっちへいったり、こっちへ行ったり。
でも、今のところ、今回新しく作った、三角柱二つを組み合わせるのは気に入っている。
あい変わらずエクセルが楽しいこのごろ。
今頃になって何?という反応だとは思うのだが、自分は全くそういう流れだ(去年の8月はこんなことを書いていた)。
元のサイズ、作業中の諸々のサイズ、出来上がりのサイズ、などなるべく全部記録するようにしている。
今までも、ノートを取ってはいたが、メモの仕方が統一されていないので、毎回読解が必要でめんどうだった。
最近は、紙定規を使ってサイズの測り方や、数値の入れ方もだいぶ決まってきたので、使えるようになってきた感じ。
もっともシンプルな作例として、折り箱の差し込み箱を作ってみた。
本の、幅、高さ、厚さ、を測って、エクセルに数値を入力すると、折り箱の展開図のサイズと折筋の位置の数値が出る。それを紙定規に移して、位置決めコマを打つ。
そのまま、筋入れとカットを行う。
折入れる時に邪魔な3ミリを12ヶ所、ここはスプリングコンパスを使って位置付けをして、カット。
毎週つづけてる、道具の動画、12回目はスプリングコンパスをやった。
毎回、一つの道具を説明し、製本を教える時に役立てようというつもりだった。だが、どの道具もあたりまえに多用途。目の前に相手が居れば、こんなふうに使いますと、仮にやって見せれば済む。
が、動画ではもっと「わかりやすそうな仮のセット」を作らなければならない。どういう状況かをしゃべって説明しなければならない。手間がかかるし、難しい。普通にしゃべると繰り返しが多くなって聞くに耐えないし、シナリオを書いたって憶えられないから、何度やっても説明しおとしてしまう。手の動きも口で説明しやすいものになったりして、おかしい。
で、方針を転換。
1、しゃべらない
2、実際の工程を撮る
ことにした。
ミゾ板は、ちょうど頼まれていた角背の本での作業をメインに撮った。
続く、今回のスプリングコンパスも、ちょうど夫婦箱を一個作る必要があったので、その工程で2シーンを撮った。
そう、だいぶ気軽に工程の動画を撮れるようになったのだ。
ここ数年の動画作りで、いろんな台を作ったので、俯瞰でも斜めからでも、いろんな高さ、角度でさっと撮れるようになった。マイクも音質は諦め、Bluetoothのイヤホンで自分が聞こえてる作業音をとることにしてしまったのでごちゃごちゃ考えない。
それで、ちょっとしたことでも特徴的なことは記録しておこう、というふうになってきた。
今までも写真で工程を撮ったりはしていたが、人に説明するとき、動画は圧倒的にわかりやすい(「この本」が手作りでどのように作られたか、は、ほとんどの人には想像もできなことだと思うし)。検索できるように整理さえしておけば、とても便利。
さて、今週の作業は、
これの本番だった。サイズが大きいのと凝った作りなのとで、綴じの工程はこんな感じに。
久々に使った、教室初期に考えて作った、かがり台。試作時は、寄せ盤かがり台を使ったが、それだと小さくて対応できないので、これを出してきた。
両脇の柱の足(真鍮の棒)を一本抜いて、柱を回転して使うと、綴じ緒(張ってある紐)を下まで露出させて使うことができる。オレンジと白で隙間にチラッと見えてるのは、リュックの口を締める紐などに使うコードストッパー。これで紐の下端を留める。上端はドーナツ状の亀座金2枚の間に挟んで留める。このように「組み上げた」「装置」っぽい感じが、嬉しい(過去の自分よ、うまい道具を作っておいてくれてありがとう、というのもある)。
後ろ側から見るとこんな。両面テープで折を貼りながら、本かがりもやる、という特殊な作りなので、こういうことになった。綴じ以外の三方をしっかり枠にするというのも、最近の発想。これですね。
自分は道具でできている、なんて思った。
過去の集積の「つぎはぎ」で、新ルートを歩く方法が見つかる。
今週の動画は、ミゾ板(またはミゾ付け板)。
ミゾのあるハードカバーの本を作る時に使う道具だ。もう少し詳しく言うと、本の中身と表紙を合体する「くるみ」という作業に使う。
この作業は、他の道具でやることも多い。以下、いくつか挙げてみた。
普段学校などでは、目玉クリップを使う。前は竹ひご2本と輪ゴム使ったり、いろいろやったが、目玉クリップに落ち着いた。安価で入手しやすく、作業もしやすいので、これはとてもいい。ただし、本が厚くなるとクリップが具合良く届かないので使えない。安心して使えるのは厚み2センチくらいまでか。
こんな↑感じで、ミゾにぴったり嵌るので使いやすい。実際の作業では当て紙をしてから挟む。
自分の個人教室では、だいたい小さいアイロンを使ってる。布装をやることが多く、素早くきっちり付けられる。私自身としては、一番使いやすい、くるみ道具だ。現在愛用してるのは、クロバーのパッチワークアイロン↓
実際に使う時は、クッキングシートなど当て紙をして使う。
とても快適に作業できるのだが、アイロンならなんでもいいわけではなく、このような形のところをこう嵌めて使う、ということを人に説明するのが面倒で、わかりにくい。
そうそう、イチョウ↓という道具もあるのだった。電熱イチョウ、というのも。ミゾを入れるための専用の道具なのだが、私には使いにくい。持ってるけど、全く使わない。
また、こういった特別な道具を使わないで、ヘラで押さえるだけという工程でワークショップを考えたこともあった。
さてさて、そんななかで、どうしてもミゾ板でなければ、という場面がある。それが、革の本の時だ。革の時は、アイロンが使えない。湿った革はアイロンで変色したり、ひどい時は焦げてしまうこともある。そんな場合は、ミゾ板しかない。
最初にミゾ板を自作したのは、まだ製本をカルチャーセンター(池袋西武のコミュニティカレッジ)で習っていた頃ではないかと思う。使用する金属板のところを紙で覆うことを教えてもらった記憶がある。一方ジョイントプレートという金属板をホームセンターで見つけて、工作方法を試行錯誤(最初からネジで止めると、でっぱりの幅が動いてしまって一定にならないので、両面テープなどで一旦しっかり止めてから、ネジを穴に触れないように締める、という結論になった)したのを思いだす。
動画にもメインで登場させたこれが、その時に作ってからずっと使っているものだ。
狙ったわけではないが、両側にはみ出ているので、プレス(手機械)に挟むのにとても都合がいい。
つい昨日も使ったのは、だいぶ大きい本用のこれ↓
ベニアに釘で板を打ち付けて、鉋などで削って本に嵌る部分は薄くしている。ミゾの深さは、内側にボール紙を重ねて調節できるのが、よい点。写真のベニアを見てわかるとおり、つなぎ合わせて応急的に作ったが、意外と繰り返し使っている。
今週の動画は両面テープをやった。
まずは、私の「接着」体験史。
大学生の時、本作りでペーパーセメントを使ったり、スプレー糊を使ったりしていた。40年前でも、糊やボンド(ここでのボンドは木工用などの水性のものを指す、以下も同じ)を使ってなかった。なぜ糊やボンドを使わないかというとでこぼこになっちゃうからだったのだと思う。しかし、上記二つの接着剤は耐久性が悪く、一年もしないううちにはがれることも稀ではなかった。こまったことだった。しかし、手製本を習う以前、糊とボンドを使うという発想にはならなかった。
当時でも珍しいと思うが、大学では表具を習った。生麩糊(小麦粉から作る)を煮たり、裏打ちを仮張りという柿渋を塗ったパネルに貼って乾かしたり、という体験したので、水分のある糊と紙との関係が自然に身についたと思う。その前に予備校でも盛んに紙をパネルに水張りしていた。これは水彩で描いても、乾けばピンとまっすぐになって気持ちがいい。
そのだいぶ後にとりくんだ手工製本も、いわば伝統技法。糊とボンドを使う。歴史的にはボンド以前は「にかわ」を使っていたのが、たまにだが私も使うことがある。水分のある糊と紙という組み合わせに慣れて何十年。現代人ではとても特殊な状況だろう。
そんなことで、これまで糊や刷毛の動画はいくつか作って紹介してきた。
例えば、こんな。
一方、両面テープはこういった製本の接着の延長にあるものではなかった。
(あえて延長にあったものを挙げるとすると、セメダインスーパーXなどの水分のない接着剤。そのことについては、また説明する機会があるかもしれない)
私が両面テープを有用なものとして意識するようになったのは、製本そのものではなく、そのための道具を作ることにおいてだった。簡単に板と定規を貼ったり、組み合わせが自在にできることがすごく便利だった。
製本自体には、ときどき必要に迫られて、保存に安心な中性の両面テープを使うことはあったが、あくまで特殊な事例にすぎなかった。
それが、最近は、大学生や高校生を教えていると、両面テープが製本に有用な材料だな、と思い直すようになってきたのだった。私の学生時代以上に水性の糊は、学生にとって縁遠いものになっている。
水性の糊は、塗るのにかかる時間で、紙の延びが変わる。そうすると乾いた後の縮みかたが変わり、結果として反りがでてしまったりする。プレスを使うか、おもしをおくか、ドライヤーを使うか、などの乾かし方でも、乾き終わってからのいろいろが違ってくる。作った本が展示の時に反らないようにするのは、さらに困難。まあこのくらいかな?という勘が働くようになるのにはそうとう経験が必要。それを伝えるのは、動画はもちろん、面と向かって教えるのでも無理で、自分でやってみるしかない。
このような難しさに慣れて、難しさを感じなくなっていたことに気づき、学生の展示なども考え、近頃は、両面テープを製本に使うことをいろいろ試すようになってきているのだった。
また、普通の(耐久性に保証のない)ニチバンのナイスタックでも、ずいぶん昔に作ったものでもセロテープなどのような変色や剥離は起きてないので、この点でも「まあいいかな」と思うようになった(セロテープなどと違い、紙の内側に使われるので、外気に触れず、酸化しにくいのかな、と想像している)。
そうして、今回の動画は、道具作りと製本にまたがる両面性のある材料として紹介してみることにしたのだった。
長々と書いてきたが、さらに付け加え。
説明しにくいので例をあげる。ここでやってるように市販の剝離紙の上に、両面テープを貼りながらちぎっていく。この作業、以前は、ガムテープをボール紙の上に敷き詰めるように貼って、その上に両面テープを貼って、ちぎっていた。しかし両面テープがガムテープに貼り付いてしまい、両面テープの自体の剝離紙が離れてしまって使えないことがあって効率があがらない。
そこで、シール収集用の剝離紙を使ってみたら快適。
このことから、両面テープの基材の両面と剝離紙の両面の間の粘着力は、適度に調節されていないとうまく使えるものにはならない、ということを理解した。
冒頭の写真は、両面テープの貼り方の例だけれど、このくらいの間隔で、曲げた時の紙の表裏から、貼り合わせがあまり目立たなくなる。しかし、両面テープの厚さが全然見えないためには、貼られる紙の方の厚さにも限度があるのである。